千葉の大都会こと柏市で塾講師をしております、あいぴーと申します。よろしくお願いいたします。
本日は漢文の教材を紹介します。「漢文?そんなん捨てたわ!」という高校生は受験生であるか否かを問わず多いのではないでしょうか?そんなあなた、少し立ち止まってみてください。
漢文というのは大変に面白いものです。日本では『三国志』や『水滸伝』、『西遊記』など、昔の中国の作品が親しまれています。スマホゲームでもこれらの作品のキャラクターが多く出演しているくらい、今の日本でも広く受け容れられています。それらも元を辿れば漢文学なのです。
つまり、親しみやすい世界観なのですね。多くの高校生が古文のおまけ、センター試験さえ突破できれば……程度に考えてしまうのはとてももったいなく思っています。そして、「そもそも何書いてあるのか読めない」部分にその主原因があるのではないでしょうか?
そんな漢文を読めるようにするための下地作り、そのための教材を紹介します。少しでも読めるようになってくると、楽しい世界が開けてきますよ。
教材名/出版社
教材名 | 漢文 高校初級編(発展30日完成シリーズ) |
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会社名 | 日栄社 |
この教材はどんな人におすすめですか?
センター試験(共通テスト)や私立、国公立二次受験を問わず、大学入試で漢文を必要としている人。特に漢文のルールや句法がよく分からない、全然読めない・解けない、なんとなく解けるけど訓点を振る問題は無理、などなど、漢文で困っている人みんなにお勧めします。
教材概要
漢文における文法、いわゆる「句法」を、嫌になるほど(笑)たっぷり濃厚に演習することができます。実際の史書や経書などから引用されて設問になっていますから、堅実に、確実に、漢文の基礎が身につく構成になっています。
教材のポイント
ポイント
- 漢文と格闘する
- わかりやすい構成と重厚な練習問題
- 問題の質の高さ
- 世界史選択者には+αのメリットあり
- POINT 1
漢文と格闘する - 格闘するとは、「いかなる初見の詩・文が出てきても誠実に読み味わうこと」と考えてください。一つ一つの字句に正面から向き合い、その表現からイメージされるものを汲み取るのです。これができれば最強です。小手先のテクニックは場合によっては使えなくなります。
「問題の形式が変わったら?」「問われ方が変わったら?」そんな心配をしなくとも、文章に誠実に向き合う姿勢を忘れずに、そしてその力をがっしりと身につける、そんな勉強をしていくと漢文以外の教科にも必ず役に立ちます。
さてさて、そう考えたときに、「そもそも漢文とはなにか?」という根本的な部分を理解すると勉強法が見えてきます。現在の中高で学ぶ漢文とは、昔の中国語の詩文を日本に輸入した際、中国語ではなく日本語で読むために、語順の異なる中国語に返り点を振ることで読む順番を変えたものです。つまり、中国という世界を、日本語として受容してきたのです。『論語』や『三国志』などは、中国の古典であると同時に、日本の古典としても受け継がれてきたということです。
すなわち、元々は中国語なわけですから、その基本ルールさえ知っておけばそれを日本語化する(返り点と送り仮名を振る)ルールも分かると思いませんか?そういう基本を意識した上で文型を理解し各句法を学習して、さらに漢字が表意文字であるというところを定着させられれば、誰でも漢文を読むことができるようになるのです。
この教材は導入からこうした点にフォーカスを当てています。
- POINT 2
わかりやすい構成と重厚な練習問題 - 全体で学習する内容が30日分に分割されており「その日に何を学習するのか」「学習のポイントは何か」が簡潔にまとまっていて、練習問題が豊富に揃っています。
特に生徒から悲鳴が上がる(笑)のは第4日目の「熟語の構造」です。四字熟語が40個並んでいて、構造を考えながら返り点と送りがなをつけ、意味を考えます。
- 不倶戴天
- 論功行賞
- 朝令暮改
- 隔靴掻痒
- 我田引水
- 漱石枕流
- 不即不離
-
本書で取り扱う四字熟語の例
など
たとえば、「臥薪嘗胆」を訓読して意味を考えましょう、というものがあります。「いきなりそんなんわかるかっ!」と言いたくなりますね。そうです、初見で分かる高校生なんていません。いたら怖い。私の代わりに漢文を教えてもらいたいくらいです(笑)。
これを使ってどう勉強するかは後述しますね。
- POINT 3
問題の質の高さ - 普段の句法演習や何日分かまとめての総合演習(読解問題)は、ともに良質な文と確実に底力をつける形の設問で構成されています。
口語訳をしなさい、というタイプの問題はかなりヘビーですが、急がば回れということわざの通り、これをやることが確実にあなたの中に芯を作ります。また、「口語訳を参考にして送りがなと返り点をつける」という設問はさらにヘビーです。これは初見では難しい。ただ、何度か反復すると分かってくる。分かってきた頃にはセンター試験レベルは怖くなくなっています。
質の高い問題に真摯に取り組んで、漢文を確実に得点源にしませんか?ここが安定するのは文系・理系どちらであってもメリットが大きいのです。
- POINT 4
世界史選択者には+αのメリットあり - 特に世界史選択者は、中国史を触れているとニヤリとする文がたくさんあります。教科を超えた相乗効果も狙えますよ。「莫若六国従親以擯秦」なんでどうですか?読めないかもしれませんが、世界史の息吹を感じませんか?こうやって他教科で得た知識を別の形で反復すると定着もしやすくなりますし、「あ!これ知ってる!」となると親しみも湧いてきますね。
先生よりアドバイス・メッセージ
まず、漢和辞典と漢文の句法集、古典文法書を用意してください。できれば国語辞典もあるといいです。そして、初見では辞書をフル活用して構いません。
各ページ上部の要点まとめも参照して、句法集も見て、たくさん調べてメモしながら正答を作ってみましょう。送り仮名は昔の日本人が考えたものだから古典文法のルールです。体言に接続するなら連体形に活用して……などありますから、これも文法書で確認しながらで構いません。そして、1周目でそれをやったら、2周目からは調べなしでやってみてください。分からないところはいくつもあると思いますが、「思ったより分かる!」となるかなと思います。
こういったものは反復が命です。一度で覚えられる天才はそうそういませんからね。反復反復!
注意点は2つ。
まず、1日25分という時間が目安として書かれていますが、初学者で調べながらでは厳しいでしょう。もしあなたが高校1・2年生であれば1日30分で半分やれればいいと思います。ひと通り終えるまで2ヶ月ほどかかりますが、やる価値はあります。
もう一つは解答欄の狭さです。書き下し文や口語訳、絶対この枠に収まりません。紙面の都合上仕方ないとは思います(それだけ濃密に詰め込んでいるとも言えます)。ひとまず1周目はノートを用意してそちらに調べながら解いていく、ルーズリーフにやってきちんとまとめておく等、工夫が求められます。自分のやりやすい方法を考えてみるのも楽しいものですよ。
そうそう、最後に、漢文をはじめ全てに役立つポイントを。
漢字の意味に常に意識を払いましょう。たとえば「優麗」という言葉があります。おそらく、この言葉を日常的に使う人はほとんどいません(高校生ならなおさらでしょう)。でも、意味はなんとなくわかるのではないですか?「優れている」「麗しい」の組み合わせですから、「なんかすごいキラキラっとした感じ」とイメージできませんか?そういうのを常に意識しながらイメージ力をつけていくのが語彙力にも繋がるわけです。先日、「武骨」という言葉のイメージを生徒に作ってもらいました。「ゴツゴツした」イメージは湧きますか?
読めるように、わかるようになるまでは大変かもしれません。ただ、真っ正面からぶつかって得た力は必ず役に立ちます。それは受験ではもちろんのこと、将来に繋がるものです。頑張ってください。